添乗員ライターがお届けする海外旅行情報。今回は、台北から気軽にアクセスできる台湾屈指の観光スポット「淡水老街(たんすいろうがい/ダンシュイラオジエ/Tamsui Old Street)」をご紹介します。
淡水老街は、台湾新北市淡水区(しんほくしたんすいく/シンベイシーダンシュイチュー/New Taipei City Tamsui District)に広がる歴史ある商店街で、台湾を代表する観光地のひとつです。淡水河(たんすいがわ/ダンシュイホー/Tamsui River)の河口に位置するこの街は、400年以上にわたる豊かな歴史を持ち、かつては台湾北部における最重要の貿易拠点として栄えました。
台北市内からMRTでわずか40分程度という抜群のアクセスの良さも魅力のひとつ。週末ともなれば、地元の台湾人だけでなく、日本や韓国からの観光客で賑わいを見せます。老街を散策すれば、昔ながらの伝統的な店舗と最新のモダンなショップが調和する独特の雰囲気に包まれ、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえるでしょう。
川沿いの遊歩道からは、淡水河に沈む美しい夕日を眺めることができ、「台湾のベニス」とも称される水辺の風景が訪れる人々を魅了し続けています。さらに、淡水ならではの名物グルメである阿給(アーゲイ/A-gei)や鉄蛋(ティエダン/Iron Egg)といった伝統料理も、この街の大きな魅力となっています。
淡水老街を訪れる前に知っておきたい懸念点

淡水老街への観光を計画する際、いくつか注意しておきたいポイントがあります。これらを事前に把握しておくことで、より充実した旅行体験が可能となります。
まず、週末や祝日の混雑状況についてです。淡水老街は台北近郊で最も人気の高い観光地のひとつであるため、特に土日祝日や連休期間中は大変な混雑となります。老街のメインストリートである公明街(ゴンミンジエ/Gongming Street)や中正路(ジョンジェンルー/Zhongzheng Road)は、観光客と地元の人々でごった返し、歩くだけでも一苦労という状況になることもあります。
また、グルメ店の多くは午後からの営業となるため、午前中に訪れると開いていない店舗が多く、やや物足りなさを感じる可能性があります。老街の真価を味わうのであれば、お店が揃って営業を開始する正午以降の訪問がおすすめです。
交通アクセスについても、MRTは便利ですが、淡水駅は台北MRT淡水信義線の終点駅であることから、ラッシュ時間帯や休日には混雑が予想されます。車でのアクセスを検討される方は、駐車場の確保が難しいことも覚悟する必要があります。特に夕方の時間帯は、美しい夕日を見るために多くの観光客が訪れるため、交通渋滞が発生しやすくなります。
さらに、老街の店舗は観光地価格に設定されていることが多く、同じグルメでも老街以外のエリアで食べる方がリーズナブルな場合があります。地元の人々の間では、老街から少し離れた真理街(ジェンリージエ/Zhenli Street)や英専路(インジュワンルー/Yingzhuan Road)周辺の店舗の方が、質も価格も優れているという評価も聞かれます。
天候に関しても注意が必要です。淡水は海に面した地域のため、風が強い日も多く、特に冬場は体感温度が低く感じられます。また、雨天時には屋外の散策が制限されるため、美しい夕日や淡水河の景観を楽しむことが難しくなります。
400年の歴史が息づく港町・淡水の成り立ち
淡水老街の魅力を深く理解するためには、この街が辿ってきた歴史を知ることが欠かせません。淡水は台湾の中でも特に複雑で興味深い歴史的背景を持つ地域です。
淡水はかつて「滬尾(ホーウェイ/Huwei)」と呼ばれていました。この名称の由来については、原住民であるケタガラン族(Ketagalan)の言葉を漢字で表したものとする説と、淡水河に多くあった漁業用の石造りの仕掛け「石滬(シーフー/Stone Weir)」から来ているという説の二つが存在します。いずれにしても、この地が古くから水辺と深く結びついた場所であったことは間違いありません。
淡水が歴史の表舞台に登場するのは17世紀のことです。1628年、当時台湾北部を支配していたスペイン人によって、この地に城砦が建設されました。その後、1642年にオランダがスペインを駆逐し、オランダ統治時代が始まります。この時期に建設されたのが、現在も淡水のシンボルとして残る紅毛城(こうもうじょう/ホンマオチョン/Fort San Domingo)です。
淡水が最も繁栄を極めたのは、19世紀後半から20世紀初頭にかけての時期でした。1858年の天津条約(てんしんじょうやく/ティエンジンティアオユエ/Treaty of Tientsin)により淡水港が開港すると、この地は台湾北部における最大の貿易港として急速に発展を遂げます。1864年から1894年までの約30年間、淡水港からの輸出額は台湾全体の57パーセントを占めるまでになり、茶、砂糖、樟脳といった商品が盛んに取引されました。
淡水老街、当時は滬尾街(ホーウェイジエ/Huwei Street)と呼ばれた商店街は、まさにこの港の繁栄とともに形成されていきました。港に入港した船員たちが最初に足を踏み入れる陸地であり、数多くの貨物が行き交う場所として、街には各種の公務官庁や貿易商社が軒を連ね、活気に満ちた賑わいを見せていました。オランダ統治時代から続く淡水の経済的中心地として、老街は台湾の近代化を支える重要な役割を果たしてきたのです。
19世紀にはイギリス領事館が設置され、西洋文化の影響を強く受けるようになります。カナダ生まれの宣教師ジョージ・レスリー・マッケイ(George Leslie Mackay)が淡水で伝道活動を開始したのもこの頃で、彼は教会や学校、病院を設立し、淡水の近代化に大きく貢献しました。現在も淡水には、マッケイ博士にちなんだ「馬偕街(マージエジエ/Mackay Street)」という通りや、彼が建てた教会、診療所跡などが残されています。
20世紀に入ると、日本統治時代を迎えます。この時期には日本式の建築物も数多く建てられ、現在も多田榮吉故居(ただえいきちこきょ/ドゥオティエンロンジーグージュー/Tada Eikichi Residence)や日本警察宿舎跡などが保存されています。多田榮吉は淡水の街長を務めた日本人で、彼の邸宅は日本建築の特徴を色濃く残す貴重な文化財となっています。
このように、スペイン、オランダ、清朝、イギリス、日本と、様々な国や文化の影響を受けてきた淡水は、台湾の中でも特に国際色豊かな街として発展してきました。老街を歩けば、この複雑な歴史の痕跡を至るところで見つけることができます。西洋式の赤レンガ建築、台湾の伝統的な閩南建築、日本家屋といった異なる建築様式が共存する街並みは、まさに淡水ならではの景観といえるでしょう。
淡水老街の構成:2つのエリアで楽しむ散策
淡水老街は大きく分けて2つのエリアで構成されており、それぞれ異なる魅力を持っています。この構成を理解しておくことで、効率的に老街を満喫することができます。
まずひとつ目は、淡水河に面した「川沿いエリア」です。環河道路(ホワンホーダオルー/Huanhe Road)沿いに広がるこのエリアは、金色水岸歩道(ジンスーシュイアンブーダオ/Golden Riverside Promenade)とも呼ばれ、淡水老街の中でも最も景観に恵まれた場所となっています。整備された遊歩道を歩けば、対岸の八里地区(バーリーチュー/Bali District)の眺めや、行き交う船の様子を眺めながら、ゆったりとした時間を過ごすことができます。
川沿いには飲食店や屋台がずらりと並び、淡水河を眺めながら食事を楽しめる店舗も多数あります。特に夕暮れ時には、水面を黄金色に染める美しい夕日を眺めるために、多くの人々がこの遊歩道に集まります。カフェやレストランのテラス席に座り、水辺から吹く心地よい風を感じながらのひとときは、淡水観光のハイライトのひとつといえるでしょう。
ふたつ目のエリアは、川沿いから一本内側に入った「商店街エリア」です。中正路と公明街を中心としたこのエリアは、淡水老街の中核をなす賑やかな通りで、伝統的な老舗店舗とモダンな新しい店が混在する独特の雰囲気を持っています。
全長約300メートルの公明街は、道の両側にグルメ店や屋台、お土産店がぎっしりと並び、まるで夜市のような活気に満ちています。昼から夜まで一日中賑わいを見せるこの通りでは、台湾カステラ、焼きイカ、巨大ソフトクリームといった食べ歩きグルメを楽しむことができます。観光客だけでなく、地元の人々の生活にも欠かせない場所となっており、日用品を扱う雑貨店や伝統的な菓子店なども多く見られます。
公明街と交差する中正路は、より都市的な印象のエリアです。こちらには行列のできる有名グルメ店が集中しており、淡水名物の阿給や魚丸湯(ユーワンタン/Fish Ball Soup)を提供する人気店の多くが、この中正路沿いに店を構えています。ビルも多く、銀行などの商業施設も並ぶため、オフィス街のような雰囲気も感じられます。
さらに、老街の北側には重建街(チョンジエンジエ/Chongjian Street)と清水街(チンシュイジエ/Qingshui Street)という歴史的価値の高い通りもあります。重建街は淡水で最も早く発展したエリアのひとつで、200年以上の歴史を持つ古い通りです。木造や煉瓦造りの伝統的な家屋が今なお残されており、老街のメインストリートとは異なる、静かで趣のある雰囲気を楽しむことができます。坂道の多いこのエリアからは、高い位置から淡水河口を眺望することもでき、隠れた絶景スポットとしても知られています。
清水街は、かつて米店や精米業が集まっていた場所で、「米市仔(ミーシーザイ/Rice Market)」とも呼ばれていました。清水祖師廟(チンシュイズーシーミャオ/Qingshui Zushi Temple)が建立されて以降、清水街という名称に改められました。現在は地元の人々の生活エリアとしての性格が強く、伝統市場なども営まれています。
これら2つのメインエリアに加えて、周辺の歴史的な通りを含めて散策することで、淡水老街の多様な魅力を余すことなく体験することができます。川沿いの開放的な雰囲気と、路地裏の落ち着いた風情、そして賑やかな商店街のエネルギー。これらが絶妙に調和しているのが、淡水老街の大きな特徴なのです。
淡水老街で必食!名物グルメを徹底紹介
淡水老街を訪れたら、絶対に外せないのが地元ならではの名物グルメです。この街で育まれてきた独特の食文化は、淡水観光の大きな楽しみのひとつとなっています。
阿給(アーゲイ/A-gei):淡水を代表する看板料理
淡水名物として真っ先に挙げられるのが「阿給」です。この料理の名称は、日本語の「油揚げ」を台湾語で発音した「アブラアゲ」に由来しており、略して「アゲ」、台湾語表記で「阿給」となりました。
阿給の作り方は独特です。まず、油揚げや厚揚げの中心部分を丁寧にくり抜き、そこに炒めた春雨を詰め込みます。店によっては春雨を炒めずに詰めるところもありますが、多くの店では味付けをした春雨を使用します。詰め物を入れた後、開口部を魚のすり身で封をし、出汁に浸してから蒸し上げます。食べる際には、甘辛いソースや各店独自の特製ソースをかけていただきます。
この料理が誕生したのは1965年のこと。日本統治時代の教育を受けた楊鄭錦文(ヤンジェンジンウェン/Yang Zheng Jinwen)という女性が、余った食材を有効活用するために考案したのが始まりでした。当時、淡水には日本人が多く住んでおり、豆腐店も多く存在していました。日本人が油揚げで食材を包んでいたことからヒントを得て、この独創的な料理が生まれたのです。創始店は淡水区の真理街に位置し、現在も営業を続けています。
阿給の美味しさを決める要素は、魚のすり身の新鮮さ、春雨の食感、豆腐皮の厚さと柔らかさ、そしてソースの味わいです。良い阿給は、魚のすり身が鮮やかで弾力があり、春雨は適度なコシを保ちながらも柔らかく、豆腐皮は薄めで出汁が染み込んでいます。
阿給の食べ方にもコツがあります。まず箸で豆腐皮の中央部分を開き、ソースが中までしっかり浸透するように春雨とよく混ぜ合わせます。豆腐皮と春雨が十分にソースを吸収したら、いよいよ食べごろです。一口頬張ると、豆腐皮の柔らかさ、春雨のつるつるとした食感、魚のすり身の旨味、そしてソースの甘辛さが絶妙に調和した味わいが広がります。
淡水老街周辺には数多くの阿給店が存在し、それぞれが独自の味を追求しています。真理街の「淡水文化阿給(ダンシュイウェンホアアーゲイ/Tamsui Cultural A-gei)」は創業46年を誇る老舗で、台湾の人気歌手ジェイ・チョウ(周杰倫/Jay Chou)が学生時代によく通ったことでも知られています。ジェイ・チョウセットと呼ばれるメニューは、阿給、魚丸湯、肉まんの組み合わせで、地元の人々にも観光客にも人気があります。ここでは辛さを選ぶことができ、不辣(ブーラー/Not Spicy)、小辣(シャオラー/Slightly Spicy)、中辣(ジョンラー/Medium Spicy)、特辣(トーラー/Extra Spicy)の4段階から好みに応じて選択できます。
その他にも、「老牌阿給(ラオパイアーゲイ/Lao Pai A-gei)」「三姐妹阿給(サンジエメイアーゲイ/Three Sisters A-gei)」「清水街阿給(チンシュイジエアーゲイ/Qingshui Street A-gei)」など、それぞれに特徴を持った店舗が営業しています。地元の人々の間では、老街から少し離れた英専路や真理街周辺の店舗の方が、より伝統的な味を守っているという評価もあります。
魚丸湯(ユーワンタン/Fish Ball Soup):淡水の海の恵み
魚丸湯は、新鮮な魚のすり身で作ったつみれが入ったスープで、淡水の代表的なグルメのひとつです。淡水の魚丸の特徴は、その形状にあります。一般的な丸い形ではなく、細長い形をしているものが多く、これが淡水ならではのスタイルとなっています。
高品質な魚丸は、サメやその他の白身魚の新鮮なすり身に、少量の片栗粉と水を加えて作られます。つみれの中には、豚肉や野菜で作った特製の餡が入っており、一口噛むと肉汁が溢れ出してきます。スープは透明で上品な味わいで、魚介の旨味がしっかりと感じられます。
淡水老街の馬偕銅像(マージエトンシアン/Mackay Statue)近くに位置する「老牌可口魚丸(ラオパイクーコウユーワン/Lao Pai Kekou Fish Ball)」は、長年地元の人々に愛されてきた老舗店です。こちらでは、魚丸湯だけでなく、昔ながらの製法で作られた手作り肉まん(ロウバオ/Meat Bun)も人気商品となっています。おすすめは、魚のつみれと肉のつみれ両方が入った「綜合湯(ゾンホータン/Mixed Soup)」と肉まんのセットで、ボリュームたっぷりでありながらリーズナブルな価格設定も魅力です。
魚丸湯は阿給との相性も抜群で、多くの人が阿給と魚丸湯をセットで注文します。温かいスープがあることで、阿給の味わいもより引き立ち、満足感のある食事を楽しむことができます。
阿婆鉄蛋(アーポーティエダン/Grandma’s Iron Egg):淡水の伝統保存食
鉄蛋は、卵を何度も繰り返し煮込むことで作られる、淡水独特の保存食です。長時間の煮込みによって卵は徐々に小さくなり、色は濃い茶色から黒に近い色へと変化していきます。その硬さと見た目から「鉄の卵」という名称がつけられました。
鉄蛋の誕生には興味深いエピソードがあります。1980年、ある店主が卵を煮込んでいたところ、淡水特有の霧の深い天気が続き、なかなか乾燥しませんでした。そこで何度も何度も繰り返し煮込んだところ、偶然にも現在の鉄蛋が出来上がったのです。
淡水老街で最も有名な鉄蛋の店が「阿婆鉄蛋」です。1980年創業のこちらの店は、淡水で最も古い煮卵専門店として知られています。保存料を一切使用せず、台湾産の卵と厳選した漢方材料、キッコーマンの醤油を使って丁寧に煮込んでいます。
鉄蛋は独特の食感が特徴です。外側は非常に硬く、噛むとコリコリとした歯ごたえがあります。しかし中心部分はやや柔らかく、濃厚な旨味が凝縮されています。醤油と漢方スパイスの風味が染み込んでおり、噛めば噛むほど味わい深くなります。
店では、その場で食べられるテイクアウト用と、真空パック包装されたお土産用の両方を販売しています。真空パックのものは日持ちするため、日本への持ち帰りにも適しています。散策しながら食べ歩きを楽しむもよし、お土産として購入するもよし、様々な楽しみ方ができる淡水の名物です。
その他の淡水グルメ
淡水老街には、上記の三大名物以外にも魅力的なグルメが数多く存在します。
巨大ソフトクリーム(チャオガオバンチーリン/Super Tall Ice Cream)は、淡水老街の名物として観光客に人気があります。通常のソフトクリームの数倍もの大きさがあり、見た目のインパクトも抜群です。味はバニラやチョコレート、抹茶など様々なフレーバーがあり、暑い日の休憩にぴったりです。
魚酥(ユースー/Fish Crisp)は、魚のすり身を薄く伸ばして揚げたせんべいのようなスナックです。サクサクとした食感で、ビールなどのお酒のおつまみとしても最適です。淡水の特産品として、お土産としても人気があります。
蝦捲(シアジュエン/Shrimp Roll)は、海老の身を春巻きの皮で巻いて揚げたもので、外はサクサク、中はプリプリとした海老の食感を楽しめます。淡水河で獲れる新鮮な海老を使用した蝦捲は、海鮮の旨味が詰まった逸品です。
酸梅湯(スアンメイタン/Sour Plum Drink)は、梅を煮出したシロップドリンクで、さっぱりとした味わいが特徴です。暑い日には特に人気があり、食後の口直しにも最適です。甘酸っぱい味わいが、油っこい料理を食べた後の胃をすっきりとさせてくれます。
台湾カステラ(タイワンダンガオ/Taiwan Castella Cake)も淡水老街の人気商品のひとつです。焼きたてのカステラは、ふわふわで柔らかく、口に入れるとほどけるような食感があります。行列ができている店も多く、できたてのカステラを求めて多くの観光客が訪れます。
淡水老街周辺の歴史的建築物を巡る
淡水老街の魅力は、グルメや街並みだけではありません。周辺には数多くの歴史的建築物が保存されており、これらを巡ることで淡水の複雑で興味深い歴史をより深く理解することができます。
紅毛城(ホンマオチョン/Fort San Domingo):淡水のシンボル的存在

紅毛城は、淡水老街から徒歩圏内にある最も有名な歴史建築物です。「紅毛」とは台湾語でオランダ人を指す言葉で、この城がオランダ統治時代に建設されたことに由来します。
この場所には元々、1628年にスペイン人によって建てられた城がありました。しかし、スペインが台湾から撤退する際に破壊され、その後1642年にオランダ人が新たな城を建設しました。この時に建てられた城が、現在の紅毛城の基礎となっています。
その後、紅毛城は様々な支配者の下で使用されてきました。清朝時代、イギリス統治時代を経て、それぞれの時代に増築や修復が行われ、現在の姿となっています。特にイギリス領事館時代には、城の隣に新たな英国領事館官邸(インググオリンシーグアングァンディー/British Consulate Residence)が建設されました。この赤レンガ造りの美しい建物は、1891年に完成し、現在も良好な状態で保存されています。
紅毛城の建築は、ヨーロッパ式の要塞様式を基本としながらも、台湾の気候に適応した独特の特徴を持っています。分厚い壁は熱帯の強い日差しを遮り、高い天井は熱気を逃がす役割を果たしています。城の上からは淡水河と周辺の景色を一望でき、かつて軍事的に重要な拠点であったことがよく分かります。
現在、紅毛城は一般に公開されており、内部では淡水の歴史に関する展示を見ることができます。ヨーロッパ風の建築美と台湾の歴史が融合した独特の雰囲気は、訪れる人々を魅了し続けています。
淡水福佑宮(ダンシュイフーヨウゴン/Fuyou Temple):信仰の中心地
淡水福佑宮は、1796年に創建された媽祖(マーズー/Mazu)を祀る廟で、淡水老街の中心部に位置しています。媽祖は航海の守護神として崇められており、港町である淡水にとって特に重要な存在でした。
現在の建物は鮮やかな色彩と精巧な彫刻が施されており、台湾の伝統建築の魅力を間近に感じることができます。屋根の装飾、柱の彫刻、壁面の絵画など、細部まで職人の技が光ります。
福佑宮は今も地元の人々の重要な信仰の場として機能しており、日々多くの参拝者が訪れます。観光客が賑わう老街の中にあって、この廟の中だけは静謐な空気が流れており、台湾の人々の信仰文化に触れることができる貴重な場所となっています。
多田榮吉故居(ドゥオティエンロンジーグージュー/Tada Eikichi Residence):日本統治時代の面影
多田榮吉故居は、日本統治時代に淡水で街長を務めた多田榮吉の邸宅跡です。1934年に建設されたこの建物は、典型的な日本家屋の様式を今に伝える貴重な文化財となっています。
建物は木造平屋建てで、畳の部屋、襖、縁側など、日本の伝統的な住宅建築の特徴を備えています。庭園も日本庭園の様式で設計されており、石灯籠や飛び石が配置されています。戦後80年以上が経過した現在も、建物は良好に保存されており、台湾における日本統治時代の生活様式を知ることができる重要な資料となっています。
この建物からは淡水河口を見渡すことができ、かつて多田榮吉がこの景色を眺めながら淡水の街づくりについて思いを馳せていたことが想像されます。現在は文化財として保護され、一般公開もされており、日本と台湾の歴史的つながりを感じられる場所として、多くの人々が訪れています。
前清淡水関税務司官邸(チエンチンダンシュイグアンシュイウースーグァンディー/Former Residence of Customs Officer):西洋建築の傑作
前清淡水関税務司官邸は、1870年に建てられた清朝時代の税関職員の官邸です。純白の外壁が美しいことから「小白宮」(シャオバイゴン/Little White House)の愛称で親しまれています。この建物は、殖民地様式建築の傑作として評価されており、アーチ型の回廊が特徴的です。
建物は海を見下ろす高台に位置しており、かつて税関職員がここから淡水港に出入りする船舶を監視していました。回廊に囲まれた中庭は涼しく、ヨーロッパの貴族邸宅を思わせる優雅な雰囲気があります。白い壁面に囲まれた空間は、撮影スポットとしても人気があり、多くの観光客がこの美しい建築を写真に収めています。
真理大学(ジェンリーダーシュエ/Aletheia University)と牛津学堂(ニウジンシュエタン/Oxford College):教育の礎
真理大学のキャンパス内には、1882年にカナダ人宣教師マッケイ博士によって設立された牛津学堂があります。これは台湾で最初の西洋式の高等教育機関であり、台湾の近代教育の発祥地ともいえる場所です。
赤レンガで造られた建物は、中国の伝統的な要素と西洋の建築様式が融合した独特のデザインとなっています。マッケイ博士は医療や教育を通じて台湾の人々に貢献し、淡水の発展に大きな影響を与えました。彼の功績は今も地元の人々に敬愛され、淡水の各所にその足跡を見ることができます。
大学のキャンパスは一般にも開放されており、緑豊かな構内を散策することができます。古い建物と新しい校舎が共存するキャンパスは、淡水の歴史と現在をつなぐ場所として、独特の魅力を放っています。
淡水河の夕日:台湾屈指の絶景スポット
淡水観光のハイライトのひとつが、淡水河に沈む美しい夕日です。台湾八景のひとつにも数えられるこの夕日は、淡水を訪れる観光客の多くが楽しみにしている光景です。
淡水河口に位置する淡水は、西向きに開けた地形となっているため、夕日観賞に最適な条件が揃っています。川面に映り込む太陽の光が黄金色に輝き、対岸の観音山(グァンインシャン/Guanyin Mountain)のシルエットとあいまって、幻想的な景色を作り出します。空の色は時間とともに変化し、オレンジから赤、紫へとグラデーションを描きながら、やがて夜の帳が下りていきます。
夕日を眺めるベストスポットとしては、まず淡水老街の川沿いの遊歩道が挙げられます。金色水岸歩道と呼ばれるこのエリアには、ベンチや展望デッキが設置されており、座ってゆっくりと夕日を楽しむことができます。カフェやレストランのテラス席からも眺めることができ、飲み物や食事を楽しみながら夕日を待つのも良いでしょう。
渡船頭碼頭(ドゥーチュワントウマートウ/Ferry Pier)も人気のスポットです。ここは対岸の八里区への渡船が発着する場所で、船着き場の周辺から眺める夕日は格別です。船に乗って川の上から夕日を眺めるのもおすすめで、水面に近い位置から見る夕景は、陸上とはまた違った美しさがあります。
また、紅毛城や小白宮といった高台に位置する歴史建築物からも、素晴らしい夕日を眺めることができます。これらの場所からは淡水河口を広く見渡すことができ、夕日と歴史的建造物を一緒に写真に収めることもできます。
夕日の時刻は季節によって変わりますが、おおよそ午後5時から7時の間です。特に秋から冬にかけての時期は空気が澄んでおり、より鮮明で美しい夕日を見ることができます。夕日を見に行く際は、日没時刻の30分から1時間前には現地に到着しておくと、空の色が変化していく様子を最初から最後まで楽しむことができます。
週末や祝日の夕方は特に混雑するため、良い場所を確保したい場合は早めに到着することをおすすめします。また、川沿いは風が強いことも多いので、特に冬場は羽織るものを持参すると良いでしょう。
淡水へのアクセスと周遊のコツ
淡水老街へのアクセスは非常に便利で、台北市内からの日帰り観光に最適です。ここでは、効率的に淡水を楽しむための交通手段と周遊のコツをご紹介します。
MRTでのアクセス

最も一般的で便利なアクセス方法が、台北MRT淡水信義線の利用です。台北駅から淡水駅までは約40分、料金は片道50台湾ドル程度です。淡水線は終点が淡水駅となるため、乗り過ごす心配もありません。
MRT淡水駅を出ると、すぐに淡水老街へと続く道があります。駅から老街の中心部までは徒歩約5分程度で、迷うことなく到着できます。駅周辺には案内表示も充実しており、初めての訪問でも安心です。
MRTを利用する際の注意点として、週末や祝日は混雑が予想されるため、座席を確保したい場合は始発駅である台北駅や中山駅などから乗車することをおすすめします。また、ICカードの悠遊カード(ヨウヨウカー/EasyCard)やiPassを持っていれば、スムーズに乗車できます。
周辺エリアとの組み合わせ
淡水観光をより充実させるために、周辺のエリアとの組み合わせもおすすめです。
対岸の八里区へは、淡水から渡船で約10分でアクセスできます。渡船の料金は片道23台湾ドルとリーズナブルです。八里は淡水よりも落ち着いた雰囲気で、サイクリングロードが整備されており、自転車で淡水河沿いを走ることができます。また、八里には左岸公園(ズオアンゴンユエン/Zuoan Park)や八里老街(バーリーラオジエ/Bali Old Street)もあり、淡水とは違った魅力を楽しめます。
淡水から少し北に足を伸ばせば、漁人碼頭(ユーレンマートウ/Fisherman’s Wharf)があります。こちらは近代的な観光施設が整備されたエリアで、情人橋(チンレンチアオ/Lover’s Bridge)と呼ばれる美しい橋や、展望台からの景色が人気です。淡水駅からバスで約15分、タクシーでも10分程度でアクセスできます。夕日スポットとしても有名で、淡水老街とは異なるモダンな雰囲気の中で夕景を楽しめます。
効率的な周遊プラン
淡水を効率的に楽しむためには、時間帯を考慮した計画が重要です。おすすめのスケジュールとしては、午前中に紅毛城や小白宮などの歴史建築物を見学し、正午頃に淡水老街で昼食をとり、午後は老街でのショッピングや食べ歩きを楽しみ、夕方に川沿いで夕日を眺めるというコースです。
歴史建築物の多くは午前9時から午後5時頃まで開館しています。午前中は比較的空いているため、ゆっくりと見学できます。老街のグルメ店は正午前後から営業を開始する店が多いため、昼食時には様々な選択肢が揃います。
夕日を見た後は、淡水老街は夜も賑わいを見せているため、夜市のような雰囲気の中で夕食や買い物を楽しむことができます。ライトアップされた川沿いの風景も美しく、昼間とは違った表情を見せてくれます。
淡水観光のベストシーズンと服装
淡水は一年を通して訪れることができますが、季節によって異なる魅力があります。
春(3月から5月)は気温が穏やかで、観光に最適な季節です。桜の開花時期には、淡水周辺でも美しい桜を見ることができます。ただし、春は雨が多い時期でもあるため、折りたたみ傘を持参すると安心です。
夏(6月から8月)は気温が高く、湿度も高いため、熱中症対策が必要です。日傘や帽子、日焼け止めを忘れずに持参しましょう。ただし、川沿いは風が吹くため、比較的涼しく感じられます。夏の夕日は特に美しく、午後7時頃まで明るいため、ゆっくりと観光を楽しめます。
秋(9月から11月)は淡水観光のベストシーズンといえます。気温は快適で、湿度も低く、空気が澄んでいるため夕日が特に美しく見えます。ただし、台風シーズンでもあるため、天気予報のチェックは欠かせません。
冬(12月から2月)は気温が下がり、特に風が強い日は体感温度がかなり低く感じられます。防寒着やウインドブレーカーが必要です。一方で、冬の淡水は観光客が比較的少ないため、落ち着いて観光を楽しめるというメリットもあります。
服装については、季節に応じた準備が大切です。夏は軽装で問題ありませんが、室内は冷房が効いているため、薄手の羽織ものがあると便利です。冬は厚手の上着が必須で、特に夕方以降は気温が下がるため、重ね着ができる服装がおすすめです。
また、淡水老街は石畳や坂道も多いため、歩きやすい靴で訪れることをおすすめします。ヒールの高い靴やサンダルでは、長時間の散策が疲れてしまう可能性があります。
淡水で見逃せないフォトスポット
淡水は絵になる風景が多く、写真撮影を楽しむのにも最適な場所です。ここでは、特に人気のフォトスポットをご紹介します。
淡水老街の川沿い遊歩道は、昼夜を問わず美しい写真が撮れるスポットです。特に夕暮れ時には、淡水河に反射する夕日の光が幻想的な雰囲気を作り出し、息をのむような美しさです。川沿いに設置されているアート作品やモニュメントも、写真のアクセントとして活用できます。
紅毛城は、赤レンガの建物と青い空のコントラストが美しく、どの角度から撮影しても絵になる被写体です。城の上からの眺望も素晴らしく、淡水河と周辺の街並みを一望する写真を撮ることができます。
小白宮の白い回廊は、SNS映えするスポットとして特に人気があります。アーチ型の回廊が連なる様子は、まるでヨーロッパの建築物のような雰囲気があり、多くの観光客が記念撮影をしています。特に午後の柔らかい日差しの中で撮影すると、美しい陰影が生まれます。
真理大学のキャンパス内も撮影スポットとして人気です。歴史的な建物と緑豊かな景観が調和し、落ち着いた雰囲気の写真が撮れます。牛津学堂の赤レンガ建築は、特に印象的な被写体となります。
渡船頭碼頭からは、淡水河を行き交う船と対岸の風景を一緒に撮影できます。特に夕暮れ時には、船のシルエットと夕日を組み合わせたドラマチックな写真を撮ることができます。
老街の路地裏も、趣のある写真が撮れる場所です。伝統的な建築物や看板、屋台の様子など、台湾らしい風景を切り取ることができます。人々の日常生活が垣間見える瞬間を捉えれば、旅の思い出として価値のある一枚となるでしょう。
お土産選びのポイント
淡水老街でのお土産選びも、旅の楽しみのひとつです。淡水ならではの特産品から台湾の伝統的な商品まで、様々な選択肢があります。
食品系のお土産としては、まず鉄蛋が挙げられます。真空パックされた鉄蛋は日持ちするため、日本への持ち帰りにも適しています。独特の味わいは、台湾旅行の思い出として最適です。阿婆鉄蛋をはじめ、いくつかの店舗で購入できます。
魚酥も人気のお土産です。魚のすり身を薄く伸ばして揚げたこのスナックは、軽くて持ち運びしやすく、お酒のおつまみとしても喜ばれます。様々な味があり、試食をさせてくれる店も多いので、好みの味を見つけることができます。
タロイモケーキ(芋頭酥/ユートウスー/Taro Cake)やパイナップルケーキ(鳳梨酥/フォンリースー/Pineapple Cake)といった台湾の伝統的な菓子も、定番のお土産として人気があります。老街には複数の菓子店があり、それぞれが独自の味を競っています。個包装されているものが多いため、職場や友人へのお土産としても配りやすいです。
ドリンク類では、台湾茶や烏龍茶のティーバッグがおすすめです。台湾は高品質なお茶の産地として知られており、様々な種類のお茶が販売されています。パッケージも美しいものが多く、見た目にも喜ばれるお土産となります。
雑貨系のお土産としては、台湾らしいデザインの小物や、漢字がプリントされたグッズなどがあります。マグカップ、キーホルダー、ポストカードなど、手頃な価格で購入できるアイテムが豊富です。
お土産を選ぶ際のポイントとしては、賞味期限や保存方法を確認することが大切です。特に食品類は、日本への持ち込みに制限がある場合もあるため、購入前に確認しておくと安心です。また、複数の店舗を比較してから購入すると、より良い商品を見つけることができます。
まとめ:淡水老街で台湾の魅力を存分に体験しよう
淡水老街は、台湾の歴史、文化、グルメ、そして自然の美しさが凝縮された、魅力溢れる観光地です。400年以上の歴史を持つこの街は、スペイン、オランダ、イギリス、日本といった様々な国の影響を受けながら発展してきました。その結果生まれた独特の文化と街並みは、台湾の中でも特別な存在感を放っています。
老街を歩けば、阿給や魚丸湯、鉄蛋といった淡水ならではの名物グルメに出会えます。これらの料理は、長い歴史の中で地元の人々に愛され続けてきた味であり、淡水の食文化を象徴する存在です。食べ歩きを楽しみながら、賑やかな商店街の雰囲気に浸るひとときは、忘れられない思い出となるでしょう。
紅毛城や小白宮といった歴史的建築物は、淡水が歩んできた複雑な歴史を物語っています。これらの建物を訪れることで、台湾の近代史をより深く理解することができます。西洋と東洋、伝統と現代が混在する淡水の街並みは、他の場所では味わえない独特の魅力を持っています。
そして何より、淡水河に沈む美しい夕日は、この街を訪れる最大の理由のひとつです。黄金色に輝く川面と、空を染める夕焼けの色彩は、見る者の心を捉えて離しません。この夕日を眺めながら、旅の余韻に浸るひとときは、淡水観光のハイライトとなることでしょう。
台北から気軽にアクセスできる淡水老街は、日帰り観光にも、ゆっくりと時間をかけて散策するにも適した場所です。朝から夕方まで、時間帯によって異なる表情を見せる淡水は、何度訪れても新しい発見がある魅力的な街です。
台湾旅行を計画されているなら、ぜひ淡水老街を訪れてみてください。歴史と文化、美食と絶景が織りなす、台湾ならではの旅の体験が、あなたを待っています。
台湾旅行はジャルパック ダイナミックパッケージで
淡水老街をはじめとする台湾の魅力的なスポットを訪れるなら、ジャルパック ダイナミックパッケージがおすすめです。航空券とホテルを自由に組み合わせることができ、あなたの旅行スタイルに合わせた理想的なプランを作成できます。
日本航空の快適なフライトで台北へ。市内中心部のホテルに宿泊すれば、淡水老街へのアクセスも抜群です。自由度の高い個人旅行でありながら、パッケージならではの安心感も得られます。
台湾の歴史と文化、そして絶品グルメを満喫する旅を、今すぐ計画してみませんか。淡水老街の夕日と、台湾ならではの温かいおもてなしが、あなたをお待ちしています。
今すぐジャルパック ダイナミックパッケージで台湾旅行を予約する
👉 https://www.jal.co.jp/jp/ja/intltour/chn/tpe_khh_oth/
航空券とホテルを自由に組み合わせて、あなただけの台湾旅行を実現しましょう。淡水老街での素敵な思い出作りを、ジャルパックがサポートいたします。


